軒ゼロ住宅に関して
雨が滝のように降っている、まるで潜水艦のように水の中に潜っているようだ。
と言う事で、軒ゼロキューブ型住宅に関しての提言。
最近流行りのアトリエ系建築家 ? などが作ったいわゆるデザイナー住宅といった物などはコストダウンの一貫として、キューブ型が多く採用されるのだが、特に最近はスタイリッシュと言うことで地域工務店やビルダーなどもフラット片流れキューブタイプの形状デザインのみを模倣した「なんちゃってデザイナー住宅」的な 建物が散見される。
若い人に人気の軒ゼロキューブ型住宅、屋根の軒を無くした四角い家。窓を少なくして外壁面を強調したなんとなくオシャレっぽい家。
そもそも軒とは何かというと、昔の言葉でも軒先を借りて商売するなどとよくいうが、外壁から突き出した屋根の部分のことを言う。帽子の「ツバ」みたいな物。さて軒の建築デザイン的目的は、アジアモンスーン地域に属する雨の多い日本において、壁の雨がかりや雨しみや汚れを防ぎ、(雨汚れは雨水に埃やカビが付着したもの。)屋根で受けた雨水を樋で受け、壁を伝うことなく流す。
※ただし雨の汚れに強いガルバニュウム鋼板の家は除外はするが、特に塗り壁やサイディング壁などの場合はあまりおすすめしない。
つまり、軒は外壁の汚れや紫外線による劣化を防いでくれるもの。また、エアコンの運転効率をあげ、室外機や給湯器などの機械を雨風による劣化から守ってくれる。夏場の暑い日差しを遮り日陰をつくり、冬は適度な光を取り入れ、夏は涼しく冬暖かく、そのための重要な建築デザインパーツである。
最近は、軒ゼロキューブ型住宅はシンプルでスタイリッシュ、かっこいいデザインが人気。建築コストも安く抑えられる。と言うことで結構建てられているが、正直、鉄筋コンクリートの家と違って木造の軒ゼロキューブ型の住宅って、日射に対しても、雨水防水に対しても長期に渡って暮らすには無防備。
雨漏りのリスク、というのは窓周りからの雨水の浸水これが一番多い雨漏りのトラブルのケース。
また都心部などの敷地に制限があったりした場合は軒が出せないのでしょうがないが、建築的意味を解せず、田舎の広いお庭がある所でも、わざわざ軒ゼロキューブ型の住宅が建っている。
デザインの好みや、目先のコストダウンはわかるのだが、後々メンテ費用がかかるのに。長期にわたって住まなければならないのに。
本来の目的はコストダウン手法なのである。一時の流行りや情熱だけで、正直、歳をとってあの建物からおじいさんやお婆さんがでてきたらびっくりである。たぶんブームは去っていくだろう。洋服のように家は着替えることができない。
この軒ゼロ住宅、前述の様に30年50年と長期に渡って住み続けるには雨仕舞いの問題を抱える。雨が降るたびに恨めしい思いをすることとなる。建ててしまってからは遅いので老婆心ながら後悔のない様に国交省のレポートを添付しておくこととする。
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反対に軒を出すデメリットってあまりないが、1メートルを超えると建築面積にカウントされてしまう。また、敷地の都合もある。軒の出1200の家も作ったりもするが、
私たちの作る家は建築面積の増加にカウントされない限度ギリギリの軒の出900となっている。(一般的な住宅の2倍の長さ。)軒を900も出せば外壁が雨に濡れることはほぼない。しかしながら必然的にコストが上がる。また風の煽りを受けやすいので台風時など、屋根の強度など、しっかり構造計算を行い。尚且つ施行技術を要する。
我々の作る家の軒は長く深く、そしてグライダーの羽のように薄くスマートに、というふうにデザインしているが、ここは薄くしつつも長く深くということで本当に苦心していて、構造計算など設計技術力のいるところ。
また当社でも当然のごとく高断熱住宅の設計施工を行なっているが、単純に高気密高断熱などと言って、Low-Eガラスや断熱材など数値にこだわるあまり窓も小さくとってしまったり。こだわる割には軒ゼロ住宅を建ててしまって、Low-Eガラス、トリプルガラスなどと文明の力で重装備なのはいいがは夏場の紫外線をカットをしつつもモロに入れてしまっている家などよく見受けられる。
夏場でも熱効率を考えて小さくした窓のサッシを締め切ってエアコンガンガン焚きつつLow-Eガラスで武装はしているが窓からは紫外線が直撃しているなどと不思議な光景。正直、ロジカルではない。
本来、日本の建築は軒の出を深くし大きく窓をしっかりとって日差しや雨を避けつつ景色を愛でる。気候の良い時は大きな窓を開け放ち自然を享受する。そして内と外との曖昧な空間を、日本古来の濡れ縁やデッキで繋ぐ。これが日本建築の醍醐味。
文明の力に頼らず、設計デザインの力で夏涼しく、冬暖かい家を作る。そのためには日本の昔からある民家を見習うべき。夏至(6/21 太陽高度74.8°)つまり南中高度の高い時期の日射を遮蔽し日陰の涼しさを享受したり、冬至(12/22太陽高度31.6°)南中高度の低い時期はしっかり窓から日差しを取り入れて暖かく住まう。設計の力で過ごしやすい家を作る。これをしっかり理解していなければ、いくら断熱性能や気密性にこだわってもあまり意味がない。
本来、デザインとは機能美の中にあるのである。
さて今回は意図的に読み難くし伝わり難くしている。一生懸命書いても人はテキストページの内容の10%しか覚えていないし、理解されないのだから・・・・・。