坪単価に関する7つの変動要因。 No 1時代的背景
最近、うちの検索サイトのワードで検索が多いのが「長崎材木店 坪単価」という検索ワード。ネット上では高いの安いと、うちの坪単価に関する適当な情報が流れているみたい。あー 苦笑。ネットは適当だから困るなー。本当にもう。
それだけ皆さんが我々に興味を持っていただいていてありがたいことなのですが、残念ながら一概に一言でお伝えすることができないのです。
そこで今回、シリーズものとして坪単価に関しての記事を日本一親切丁寧に書くこととし、業界の闇も全て世界に公開する。
ところで断熱材に関してもよく検索(我々のサイトではどんな断熱材料を使っているかの表記がない為であろう。)されているようなのでついでにここでさらりと述べると断熱材に関しては、何を使うかというよりも「熱貫流率」U値(旧K値)とその厚みで考えていく。性能基準を満たしつつ設計デザインによって使う材料を変えている。例えば屋根や天井など屋根形状を生かした勾配天井など薄く仕上げたい場合は、薄くても性能の出る素材を選定し採用する。また顧客のこだわりや要望によりセルロースファイバーやウール(音を吸収しやすい)などを選定することもある。
付加断熱として外張り断熱を採用する場合、外部に貼った断熱材が柱に届くように、ネオマホームなどの薄い材料を壁にビスで留めていく。また高性能グラスウールなどは性能を維持しながらもコストに優れていて、発泡タイプの断熱材は施工性に優れ断熱欠損がないく性能を担保しやすい。
参考までに断熱等級に関する資料を添付しておくことにする。この資料は私が丹精込めて作った断熱等級別の初期費用と冷暖房費についての資料である。家づくりの参考資料として活用していただきたい。断熱等級別仕様例-1※グラスウールを使用した場合のシュミレーションデータ事例
この様に材料特性を捕まえて縦横無尽に素材を採用していく。何を使うかはケースバイケース。我々は住宅会社の差別化のための道具として断熱材を使っていないだけ。ということでセルロースからイソシアネート系からグラスウール。水溶性発泡タイプと様々、コストと性能を見据えながら適材適所。医者が処方箋を出すように断熱材を処方していく。
断熱材ばかりに目がいっているようであるが、断熱において一番大事なのは開口部処理。熱は開口部つまり窓から一番逃げていく。家にとっては開口部って穴の空いたところ、外部と室内がたった2センチくらいで接しているのだから、つまり窓サッシの「熱貫流率」U値(旧K値)こちらの方が重要である。特にサッシ枠が熱橋となる。
また断熱性能だけで考えるなら窓(穴)のない家が最高である。またガラスの種類においてもペアガラス、アルゴンガス入りペアガラス、アルゴンガス入りトリプルガラス、これに雨戸のいらない防犯ガラスなどがあり多岐にわたる。(我々の作る家においてはデザイン性も鑑みて防犯タイプのペアガラスを一階は基本としている。)
手段はさておき目的は性能を担保することにある。性能は主にC値(現場測定)とUA値で表されるが地域によって異なる。ここでは関東~九州北部エリアを例にとる。下限値でも ZEH基準(UA値で0.6以下)、断熱等級6(UA値で0.46以下)をベンチマークし達成している。先述のように断熱性能に関しては顧客の懐具合と性能に対するこだわりに合わせて最高等級である断熱等級7((UA値で0.26以下)まで、どこまでも追い求めることが我々においては可能である。というのも技術力さえあれば、性能に関してはそれに見合う部材を仕入れ、コストさえかけていけば最高のものができる。しかしながら、予算にはコストバランスというものが必要であろう。その予算の中や要望の中で最適解を導き出すのが設計の力であると考える。断熱に関しての詳しい動画。こちらをどうぞ
耐震性能に関しては「生命を守りなおかつ、複数回の地震による揺れにも耐え住み続けることができる家」ということを念頭に耐震等級3をベンチマークしつつ設計士が設計を行う。邸別に行う許容応力度計算により導き出された数値。最近のトピックとしては制振ダンパーも組み込むこととした。この様に設計士が直接耐震コンサルティングをしている。耐震についてさらに詳しくはこちらの動画を参照していただきたい。
また、デザインに関して、我々の一番のこだわりは自然素材を使っている、塗り壁で仕上げている。といったところでは決してない。断熱にしろ、材料にしろ商社から仕入れてくれば、これらはどこの会社でも実現可能である。
我々が素材に対して求めているのは、材料の質感から出てくるデザイン性。例えば影の映り方や、反射の仕方、雰囲気。自然素材には素晴らしい魅力がある。しかしながら、自然素材を使うことが目的ではないし差別化とも考えていない。
我々の一番の特徴であり違いとは。それは外観デザイン。設計思想とは外観に現れてくる。デザインというものは建築材料のように買ってきてつけるれものでもなく。人が作り上げていくものである。どこにでも売っているものでもない。練って練って作っていくものなのである。
我々においてはデザインコードというものが存在している。間取りとの整合性を考えながら設計士がこのデザインコードを押さえながら一邸一邸プランを練っていくのである。その設計士が作ったプランに対して我々がさらにチェックを行いデザインにブラッシュアップをかけていくのである。外観に関してのデザインコードだけでも70以上にものぼり。びっしりと整理整備されている。設計デザインチームによって全てチェック管理され外観デザインレベルを担保している。
寸法は秘密であるが、家の高さ(プロポーション、立ち姿)を設計する矩計図はできるだけ低く作り重心を落とし下に持っていくことで家の重厚感を出している。他にも事細かに設計ルールが定められている。
我々の作る建物は全てこのデザインコードが適用されている。
これら全てをクリアーしていくことで、初めて我々らしい安定感のあるしっとりした外観の建物となる。(よーく外観を見比べてもらえれば違いがなんとなくわかるであろう。)
ちなみによく言われる言葉「何かわからないけど何かいいな。」この「何かわからないけど何かいいな。」とはつまり、この70にも及ぶ設計デザインコードを練り込んだ結果なのである。秘伝のデザインスパイスが練り込まれているのである。
これこそが我々の一番の売り物であるところの「設計士と作る素敵な家」決してよそが真似ができないところでなのある。
それではパンドラの箱を開けます用意はいいですか?
さて、坪単価に関して検索をかけていくと、「坪単価を出すには延べ床面積で割るのと施工面積で割るのとでは大きく異なります。よって坪単価ではなく総額で考えましょう」といった、差し障りのない肩透かしの様な説明が多いようだが、今回は腹を据えてググッと一歩も二歩も踏み込んで話をしてみたい。
このテキストを建築中のお客様やOBさんが見て嘘ばっかりと言われるのも癪なので正直にあらいざらい話したいと思う。
そもそも住宅業界において坪単価という尺度に関する基準というものがないのが諸悪の根源なのである。坪単価って本体工事だけなの?
諸経費は入っているの?入っているなら何がどこまで入っているの?消費税は入っているの?入ってないの?カーテンは入っているの?お庭はエアコン?解体費用は?オプションって何、入っている?の断熱は?耐震強度は? 薪ストーブなんかついているけどどうなっているの????????????????のオンパレードである。
聞く方も聞かれる方も?????????????である。さらには基準が一切ないので会社によってもまちまち、場合によっては予算を多めに言っておこう。安く言っておこうと。このように担当者によってもまちまち、一体何が本当なのかわからない。騙されたくない。といったのが本音のところではないだろうか?
しかしながら、聞かれる方としても、坪単価いくらですかと聞かれるのは、例えは悪いが自動車メーカーのショールームに行って軽自動車、普通車、大型車、高級車、超高級車ずらっとある中、さらには同じ車のシリーズにもグレードがピンキリありオプションも様々。
その上、実際に車が走り出すまでには諸経費、各種税金(消費税、重量税、取得税等々)ほかにも色々必要。そういった変動要因があるのだが、ずらっと並んだ車を眺めつつ、種別も問わず立ち話のような状態でたった一言、「おたくの車っていくらですか ? 」と聞かれるのと同じ。正直答えようがない。
さらにはタチが悪いのは車と違って注文住宅と言うものは目の前に現物がない。物として今ここに存在さえもしていない。一年後ぐらいにしか現物を見ることができない。何千万円の商品なのに信用のみで請負契約を結ぶ。住宅に使われるパーツは車の約2.5万点と比べ、10万点にも及ぶ4倍もの部品に及ぶ。
更には顧客の好み嗜好、大きさ要望を聞いて初めて図面におこし、積算をして金額が出る特殊な高額商品。長期にわたるアフターメンテなどのサービスクオリティーも加味しなければならない。形のない高額商品といえば保険もそうだが保険は商品の特性上、補償内容が事細かく決まっている。それくらい住宅は特殊な商品でもある。
そもそも住宅業界においては、坪単価に関しての共通の尺度となるルールーが存在しない。よってそこで坪単価がどうのこうのって言ったってしょうがない。しかしながら一昔前、昭和の時代くらいまでは住宅の種類や性能などもそんなに多くなく。それでもなんとかなっていた。一時は24万8千円などと言った酷い宣伝の仕方もまかり通っていた。網戸は別ですこれこれは別ですなどと言った信じられない時代でもあった。
さて、次に営業マンの心理と本音。「おたくの家の坪単価は?」高い坪単価を答えたりしたら話さえも聞いてもらえ無くなる、死ぬほど怖い質問。正直、私は怖くはないが苦手な質問。一言で説明できないから。しかしながら坪単価について立ち話でもするかの様に「いくらです」と一言で話すということは、顧客にとっても怖いことなのである。
何故にかというと、営業マンの心理状況や営業スタイル(低めで話して刻む様に引き上げていくタイプ、高めで話して余裕で商談を進めるタイプなど様々、まるでゴルフのアプローチみたい。)でいくらでも安く言えるし、失礼ながら相手の顔色や懐具合を見て余裕を見て高くも言えると言うこと。
それだけで高い安いと判断して決めてしまうのは、勿体無いし残念なこととなる。
本人も騙そうなどと、悪気は毛頭ない、しっかりお話がしたいだけ。あまり高くいうとお客さんが逃げたり、高く表記するとお客さんが敬遠してこなくなるから困る。低く言いすぎると後で揉める事となる。だから人間関係を作りながら抜き差しならない状況になってじわじわ価格をお教えしていく。これが定石。誰でもそうだがまずは人間関係。これが人間としての真理でもある。
でも、もっと怖いのが比較のすぎで最後にはどこの会社がいいのか、訳もわからなくなって営業マンの人間性で決めてしまう最悪のバターン。「他社も色々検討しましたが営業の◯◯さんが一番私たちのことを分かってくれたので、迷いましたが◯◯ホームさんに決めました!」(笑顔)というケース。営業冥利には尽きるのだが。契約が終わればもう彼はそこに居ない、他の打ち合わせスタッフへとバトンは渡される。
ということで往々にして営業マンが坪単価に関して言うのは本体工事のみの最低価格。延床面積(バルコニー、玄関ポーチ、ロフト、吹き抜けを含まず)ではなく施工面積(バルコニー、玄関ポーチ、ロフト、吹き抜けを含む。)で割った一番安い消費税抜きの坪単価なのである。
また消費税が10パーセントの世の中、消費税が含まれるのと含まれないのでは大きく違う。2000万円なら200万円。車が買える金額。消費税こみで話すのか話さないのかで大きく異なる。そして前出のように、答える人によってまた会社によって坪単価を出すための建物の面積基準はバラバラ。例えば、上記の建物が30坪の場合、坪単価で割り出すと消費税分だけで、坪あたり6万6千円も単価は上昇することとなる。
このような要素が複雑に交差することによってアレが入っている入ってないなどと、A社坪単価50万円×30坪=1500万円 B社坪単価70万円×30坪=2100万円C社坪単価90万円×30坪=2700万円?もう一軒家が建てれるかのようにも感じられるケースが出てくることとなる。
極端な例を出したが同じ日本の木造住宅なのになんでそんなに違うのなどとプロの私でもそう思うことがある。カラクリはおいおい全て洗いざらい述べていくが、坪単価に関してはこのようにほぼ無法地帯。
さらに実際に住むには、公共の外部給排水に繋ぐ費用や電気接続費用なども入っていない。当然諸経費である取得税固定資産税火災保険など入っていないものだらけ。まるでタイヤのついてない車を売るみたいなもの。
ちなみに土地取引、不動産の業界においては公正取引委員会の厳しい監視のもと、景品法第6条15条などでおとり広告の禁止及びその罰則の規定がしっかりあって2年以下の懲役または300万円以下の罰金、不動産取引の禁止など厳格なルールが決まっているが、こと建築になると、建築基準法においての決まりのみであり坪単価に関しての共通のルールなど全くない。全く無法地帯、自己基準なのである。まあ縦割り行政の弊害かもしれないが。
さてさて話を戻す事にしよう。
そもそも坪とはなんぞや?坪とは人間が1日に食べるであろうお米が収穫される田んぼの面積を坪と定義しているようである。目安として畳二枚分これを一坪と呼ぶ。メートル法でいうと1,82×1.82=3.3平米。平米を0.3025でかけると坪面積が算出される。
では坪単価という考え方はどこから出てきたものであろうか?以下は私の推測であるが江戸もしくは江戸以前、その地域に住む集落には棟梁というものがいて、家を作るにはその棟梁に頼むしかなかった。もちろん家の修繕もである。町医者の様なものである。さらに棟梁はその地域を束ねる長(おさ)でもあった。
そこに住まう人たちが家を普請するときに棟梁がキセル(タバコ)を燻らせながら「おまえさんならこのくらいの家の広さだね。だったら坪当たりいくらだからこれくらいかかるよ。いいかい?」と言った感じで信頼関係のもと普請されるものであったのではないかと考えられる。
そして、左官さん、建具屋さん上棟時などは地域の人々によって、それこそ地域総出の協力体制のもと家づくりが行われた。お祝いに上棟式をしたり直会(なおらい)棟が上がった建物の下でお酒を飲んだり餅投げを行ったり地域の政(まつりごと)でもあった。
さらに当時は上下水電気などもないのでそれらに繋ぐための費用。消費税などの税金。キッチンなど高価なものは当然なく至ってシンプルな価格構成であったに違いない。
どこそこと比べる訳でもなく。地域でこれくらいの建物を建てるとこれくらいかかるといった目安でもあり、信頼関係に基づく口頭による契約でもあった。つまりそもそも坪単価とは高いの安いのなどとと比べるためのものではなかったと思われる。
時代は進み。交通網も発達し、物流も進化し人や物や金が動くようになると次第に合理化が進み。家づくりは地域の大工さんから展示場を構えるハウスメーカーへと変化していくこととなる。
その様な中においても坪単価という考え方は残り続け、地域の血縁も信頼関係もない中、安い高いの比較の為の道具として残りつつげていったと考えられる。ここが下駄の履き間違い。
くどいがそもそも、安い高いを単純に比較する物ではなかったのである。しかしながら今の若い世代なども最初は坪単価などと言ったことは知らないのだが親御さんなど坪単価で家を建てた世代の影響を受け、この文化は引き継がれていくこととなる。
というのが私の持論である。
さて、次回本質に切り込んでいく。
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