坪単価に関する7つの変動要因。No 2変動要因
前回の坪単価についての歴史的背景の話から続く。
さて、坪単価とは?答えは 建築コストを建築面積で割った金額。これが曲者で、まずどこからどこまでを建築コストと考えるかそして、どこからどこまでを面積として捉えるかさらには消費税を含むのかどうかということになってくる。
まず簡単な話、坪単価を算出するための面積基準については2種類ある。1 ポーチ吹き抜けロフトなどを面積に含む施工面積、 2 それらを含まない延べ床面積。会社によって算出方法が異なる。
整理すると 1 施工面積とは建物の一階二階の床面積に加え、施工に絡む全ての部分(吹き抜け、ポーチ、ロフト)の面積のことを言う。2 延べ床面積とは建物の一階二階の床面積を合計した面積のことを言う。
また建築基準法上の容積率を満たしているか判断するために延べ床面積は使われる。面積基準として他にも建築面積というものが存在する。これは上から見たときの面積。主に建ぺい率を満たしているかどうが判定するための基準として主に使われる。
総面積的には吹き抜け、ポーチ、ロフトを含んだ施工面積の算定方式が大きくなり、こちらで建築費用を割り戻した方が坪単価は安く感じられる。
次に 建物コストに関連する7つの坪単価変動要因。
1 建物の形状によるもの。
2 軒の出など屋根形状によるもの。
3 建築のグリット基準 モジュールによる変動要因
4 素材や仕様仕上げによる変動要因
5 住宅設備あたりの面積による変動要因。
6 算入基準による変動要因。エアコン カーテン ウッドデッキ その他備品
7. 住宅の販売スタイル。商品特性による変動要因。
おまけ:坪単価ではないが土地の事情等によって大きく変動する予算。
一つづつ解説していくこととする。
1 建物の形状による坪単価変動要因。
※外周壁の形状によるもの
同じ100平米の建物でも短辺5メートル×長辺20メートル=100平米、一辺の長さが同じ10メートル×10メートル=100平米しかしながら、上は5+20+5+20=50 メートル、下は10+10+10+10=40メートル
つまり正方形に近い方が同じ面積でも10メートルほど壁の全長が短く少なくて済む。同じような理屈で凸凹の家よりも凸や凹みのない正方形に限りなく近いの家の方が壁の全長は少なくて済む。当然、コストもその分安くなる。おまけに強度も出る。
2 軒の出など屋根形状による坪単価変動要因。
フラットの屋根。コスト少<片流れの屋根<切り妻三角屋根<寄棟。コスト大
今流行りの軒の出のない家。コスト少<しっかり軒を出した家。コスト大
この様に屋根の材料の面積や施工手間によって安くもなるし高くもなる。
※最近流行りのアトリエ系建築家 ? などが作ったいわゆるデザイナー住宅といった物などはコストダウンの一貫として、キューブ型が多く採用されるのだが、特に最近はスタイリッシュと言うことで地域工務店やビルダーなどもフラット片流れキューブタイプの形状デザインのみを模倣した「なんちゃってデザイナー住宅」的な 建物が散見される。
本来の目的はコストダウン手法なのである。一時の流行りや情熱だけで、正直、歳をとってあの建物からおじいさんやお婆さんがでてきたらびっくりである。たぶんブームは去っていくだろう。洋服のように家は着替えることができない。
※軒のある無しは外壁の汚れ防水コーキングの劣化による雨漏りのリスク。メンテナンス費用の面、それらから考えると、メンテナンスコストは反転し 軒なし住宅メンテナンスコスト大 > 軒あり住宅メンテナンスコスト少 となる。ちなみに一般的な住宅の軒の出は50センチ、我々は日射遮蔽などパッシブの考えとデザイン性、そして雨がかりによる壁への汚れを考慮して軒の出は約二倍の90センチに設計している。その分コストも倍になるが長期におけるメンテナンス費用は安くなる。そこで相殺。さて、この軒ゼロ住宅、前述の様に30年50年と長期に渡って住み続けるには雨仕舞いの問題を抱える。雨が降るたびに恨めしい思いをすることとなる。建ててしまってからは遅いので老婆心ながら後悔のない様に国交省のレポートを添付しておくこととする。
次に建物構成形状、詳しいことはここでは割愛するが、平家は同じ面積でも屋根と基礎が二階建てに比べて二倍費用がかかる。同じような理屈で一階下屋付き二階建ての家の方が総二階の建物より同じ面積ならば高くなる。 以下の様な構図となる。
総二階 費用少 < 一階下屋付き二階建て < 平家 費用大
3 建築のグリット基準 モジュールによる坪単価変動要因。
モジュールとは単位であって畳の短辺を一つの基準としグリットとは格子のことをいい正方形のひとマスを一単位とする。それを910ミリ真四角とするものを910モジュールそれを1メートル真四角とするものをメーターモジュールと言う。
住宅を設計するにおいてこのモジュールによって910モジュールからメーターモジュールに変更することによって同じプランでも17パーセント程度、面積が膨張する。日本は3尺3寸ということで910モジュールが主に採用されていて、地域によっては960モジュールなどもある。
910モジュールは日本人サイズと言ってもいいかもしれない。メリットはグリットがコンパクトなためプランを細かく作れるところ。デメリットは階段廊下がメーターモジュールに比べ狭く感じること。そこはプランニングでカバーしていくが我々においては910モジュールを採用している。
顧客の希望によってはメーターモジュールで設計することもあるが、自由設計の会社にとっては910モジュールの方がプランを作り込めるため、設計の魅力を表現しやすい。
メーターモジュールは1グリットが1平米、910モジュールは0.82平米先述のように同じ間取りでも17パーセントほど面積は膨張する。何が言いたいかというと大きな面積で割るので、坪単価は前出のように17パーセントほど安く見える。ローコストメーカーがこぞって採用する所以でもある。坪単価としては安くなる、ただし総額は大きくなるが・・・
モジュールに関して、積水ハウス、並びに各ローコストメーカーはメーターモジュールを概ね採用。住友林業、ヘーベルハウス、ダイワハウスなどは910モジュールを採用
4 素材や仕様仕上げによる坪単価変動要因。
こちらは簡単。いいものを使い手間をかければ高くなるという経済原理。新建材安<自然素材高 要因は以下のようになる。
そもそもの材料コスト 大量生産工業製品 安 < 材料コスト自然素材高。大工等職人の技術能力による加工手間 新建材 手間少 <自然素材 手間大。断熱材、窓周りの断熱コスト 一般住宅 安<高断熱住宅 高。耐震性能によるコスト 一般住宅 安<震度3 高耐震住宅 高
どうせ一生長く住むなら、いい材料で丈夫で暖かく、地震にも強く丈夫で長持ち。車や洋服と違って長く住むならこちらの方がいいなー素材に関してはこちらの動画を参照していただきたい。地震耐震に関してはこちらの動画を参照していただきたい。
5 住宅設備あたりの面積による坪単価変動要因。
住宅建築の中で一番コストがかかるものといえばキッチン、洗面、トイレ、お風呂。これが4点セットとなる。だいたい200万から300万円。当然大きな家になればなるほど、ある一定の金額(例えば4点セット200万)を割るとなると大きい面積の家の方が設備当たりの坪単価は安く感じる。
要するに面積が大きくなればなるほど坪単価は安くなる。(設備が二重に必要となる二世帯住宅などは除く。)経験値で言うならば35坪を境としてコストに見えてくるようである。ということで海外製の食洗機など設備自体のグレードによっても予算は大きく変わってくる。コストが張る設備を採用することによって予算が上がると坪単価も簡単に跳ね上がる。
6 算入基準による坪単価変動要因。
例えば家族でバーベキューなど、お庭を楽しむ暮らしを提案する我々の住宅ではほぼ10軒の内7軒のお宅で採用されるのがウッドデッキ。我々においては当然のごとく本体工事に含まれることになる。金額的に70万円から100万円。坪単価という観点からすると、こちらも大きな変動要因となる。
反対に個人の趣味性が出たりする照明。取り替えがきいたり消耗品であるエアコン、カーテン、照明等は我々においては坪単価計算には入れていない。しかしながら諸経費としてこれくらいかかりますと概算で説明している。個人の予算、趣味趣向、エアコンに関しては全部屋につけるつけない色々あるが、平均値としてカーテンで30万円エアコンも同じで40万円、照明40万円くらいかな。
お庭は当然、本体とは別になるが目安としてうちでは60坪程度の土地で敷地の坪数当たり3.5万の自然の樹木を植えた里山風仕上げで210万といったところが目安かな。我々においてはお庭の工事に関しては建築の一部と考え、施工図から見積書までしっかり資金計画時にお出ししている。もちろん社内で施工管理。
※コラム お庭について
お庭の提案は必要なんだけれど住宅の資金計画予算が上がるので営業マンはしたがらない。と言うことで以下のようなトークになる。「とりあえず建てた後からでもできますから」「うちが入ると高くなりますので建てた後ご自分で探してください。」「後で自分でもやれますから」と言うお決まりのトーク。概算で100万などと計上提案してくれるのはいい方。
本音の話、庭の出来不出来で家のグレードや生活の質は格段に上がる。玄関開けたら道路だった。まるでパンツも履かずに素っ裸で外に出るみたいな感じ。一日中カーテンは閉めっぱなし。賃貸マンションの方がよっぽどいい。
たまに見る本当に悲惨なケースとして家は建っているのだがお庭がない、土が漏れ出しているというお宅。予算を使い果たして建物工事が終わった住宅会社からは放置プレー。聞いてなかったなどと、よくこれでトラブっているケースがある。お庭はセットで資金計画するべき。
先述のように我々はお庭の専門家ガーデナーが社内にいるので建物本体設計時から同時に計画は進められる。よって提案時からお庭の見積りは提出するし、施工管理までするので丸投げどころか、紹介料と言って外構業者からこっそりキックバックなんてもらったりしない。ちなみに我々では他所の住宅会社のお庭も請け負ってもいる。(笑)
さて、いよいよ総論まとめとしての記述
本丸に突入することとする。
坪単価に関する7つの変動要因。No 3変動要因総論まとめ こちらから